皆さんご存知のように、トカゲは自分の身を守るために、自らしっぽを切り落とし逃げていきます。しかし不思議なことに、またしっぽが生えてきます。つまり、再生する力があるということですね。ただ、完全に元通りにはならないようです。ご興味のある方はぜひ調べてみてください。
さて、私たち人間にも同じように「再生する」能力があることがわかり、世界中で研究が行われ、再生細胞治療が行われるようになってきました。現在、再生細胞治療において、最も行われているものは幹細胞を用いた骨再生治療となっているようです。しかし、日々どんどん研究は進み、これまで治療が困難であった疾患にも対応するようになっていくでしょう。
1.1. 凄まじい治療効果
私は2019年に、オルト教授から「教授の行っている自己脂肪由来幹細胞治療」について説明を頂き、治療のビフォー&アフターの画像や動画を見せて頂きました。その中で、乳がんによる乳房切除術となった方が、自己脂肪由来幹細胞治療を受けた半年後にその乳房が元通りになっている症例の画像をみて大変驚きました。
また私は臨床の現場で、たくさんの褥瘡(床ずれ)をケアしてきました。直径5センチほどの褥瘡になってしまうと、治癒までに2~3年以上かかるものもあります。しかし、この自己脂肪由来幹細胞治療後10週間で完治している褥瘡の画像を見て「嘘でしょう!!」と思わず声を上げてしまいました。
そして、さらに驚いたのは、脊髄損傷受傷後、上下肢麻痺となり3年間車椅子での生活となっていた男性が幹細胞治療で上下肢が動きだし、立位可能となって歩行リハビリをされていたことです。これまた言葉を失いました。とにかくもう驚きの連続だったのです。
「再生医療」や「iPS細胞」という言葉は、皆さんも一度は聞いたことがあると思います。しかし、その「再生医療」が具体的に何かということについては、ご存知ない方がほとんどだと思います。
当時の私も再生細胞治療、IPS細胞、幹細胞などという言葉は耳にしていましたが、具体的にどのようなものなのかわかっていませんでした。どこか現実離れしているように感じていたのかもしれません。しかし、オルト教授から直接頂いた資料を基に、自分なりに色々と「再生医療」について調べ、その素晴らしさを知ることになりました。
1.2. 再生医療とは
「再生医療」を調べていくと「幹細胞」というものが重要な役割を果たしていることがわかりました。前述したトカゲのしっぽが生えてくるというのも「幹細胞の力」で再生されるということなのです。私たちは、うっかり包丁で指を切ったり、転んで膝を擦りむいてしまっても、その傷は元通りになりますよね。つまり、これは皮膚の中に「幹細胞」があるから元に戻るということなのです。骨折もまた同じです。骨の中に「幹細胞」があるので骨折しても治るのです。
1.3. 私たちの体のいたるところに存在する「幹細胞」
さて皆さん、山中教授と言えば「iPS細胞」という言葉がすぐに出てくると思います。もしくは、「ES細胞」という言葉をお聞きになったことがあるかもしれません。これらは万能細胞と言われており、同じ再生細胞なのですが、幹細胞とは違った働きをもっています。もしご興味のある方は調べて頂けるとより理解が深まると思います。「iPS細胞」と「ES細胞」については、分化する途中で腫瘍化するという可能性があり、研究段階なので実際に臨床で使われていません。
一方で、「幹細胞」は腫瘍化するということはありませんので、すでに臨床で使われています。「幹細胞」は傷ついた組織を修復したり、失ったものを新しく再生したりすることができる細胞で、脂肪の細胞の中にある「幹細胞」を使ったものが主に行われています。
わたしたちの体の中には、もともと「幹細胞」があり、その代表的なものに「間葉系幹細胞」というものがあります。この「間葉系幹細胞」は骨髄・脂肪・臍帯(さいたい)・乳歯髄など様々な場所に存在しているものです。それぞれに特徴があります。脂肪に存在する幹細胞、つまり脂肪由来の幹細胞の特徴は、骨髄由来と比較して500 倍と非常に多く増殖力が高いことに加え、臓器修復に有効な成長因子の種類が多いことから、現在の再生医療の主流として様々な治療法に活用されています。
1.4. オルト教授による幹細胞治療
オルト教授による幹細胞治療は、腹部の脂肪から幹細胞を抽出し体内に注入するものです。糖尿病による膵臓の回復、脳梗塞・脳出血などの脳卒中の回復、心筋梗塞・狭心症・不整脈などの心臓病、パーキンソン・アルツハイマー型認知症、肝機能不全、関節リウマチ、靭帯損傷・肩回旋筋腱板損傷、腰椎症・慢性腰椎症、頸椎脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、皮膚形成、乳房再建などに効果が期待されています。
オルト教授は再生医療における世界を代表する研究者の1人で、現在もなお日々新しい治療法への研究を続けておられます。